ピアノ調律してもすぐに音が狂ってしまうときは弦と鍵盤をチェック!
ピアノの調律してすぐに音が狂ってしまったとき、実は調律だけに問題があるのではなく、ピアノ本体に問題が発生している場合があるのをご存じですか?ピアノはとても繊細で、高度な技術と多数のパーツによって形作られています。
各パーツの劣化や弦の緩みだけではなく、響板やピアノ本体に不具合がある場合があります。また、ピアノは湿度や気温差に影響を受けやすい楽器です。楽器のお手入れだけではなく、設置環境にも気を配る必要があります。
今回はピアノのしくみと音が狂うしくみについて、また、購入時に気をつけるべきことに関してご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
ピアノは鍵盤を叩いたさいに、内部のハンマーが弦を叩くことで音が鳴るというしくみを持った弦楽器です。この一連の動きは「アクション」と呼ばれ、フランスの考古学者がレペティション機構を発明したことにより生まれました。
この構造の最大の特徴は、連打が可能なことになります。レペティションとは繰り返しという意味を持っています。この構造が発明されるまでは、鍵盤を打つとハンマーが持ち上がって上にある弦を叩いて音を奏で、元の場所に戻るという工程が必要でしたが、レペティション機構では、ハンマーが下に下がらなくても弦を叩くことができるので、ピアノの鍵盤を連打しても音を奏でることができるのです。
また、ピアノの基本構造として鍵盤数が88の場合、弦の本数は約230本あります。基本的には低音は1本であり、高音域になるにつれて3本の弦が鍵盤に対応していることになります。
弦の本数が増えると、音を大きくし響きを豊かにする効果を得られます。高音域は低音と比較して聞き取りにくいうえに、少し硬い音になりがちです。弦を3本にするとそれぞれの弦を叩いた後の振動数が異なるため、豊かな音になりやすくなります。
ピアノ線は別名ミュージックワイヤーと呼ばれる特殊な鋼線を使用しています。これは一般的なワイヤーとは異なるもので、通常の鋼線と比較して最高品質のものを用いて作られています。また低音域のものは銅線が巻きつけられているのが特徴です。
ピアノが良い音を奏でるためにはピアノ線の質が高いものである必要があります。1本1本の針の強さでも影響を受けます。1本あたりの張力は平均60キログラムから100キログラムほどあるようです。
常にその張力で弦が弾かれているうえに、ピアノを弾いたさいにハンマーで叩くため、弦に負荷がかかります。使用頻度が高い場合はもちろんですが、弾かない場合でも弦が伸びてしまい、音の調子が変化してしまうのです。
また、弦が伸びるだけではなく、そのほかの要因でも音が変化してしまう場合があります。もし新品のピアノを購入したさい、音に違和感を感じた場合、ピアノ線以外に要因がある場合があります。その1つにハンマー側による問題があります。
ピアノを出荷する前にピアノの調整を行うメーカーが多いです。ハンマーの調整時はいずれかの目的を狙って調整されています。
● 届いてすぐの状態が一番本来の音に近いように調整
● 弾き混んでいくうちに本来の音になるように調整
基本的には前者のように、届いてすぐに本来の音が出るように調整されています。そのため、弾いているうちに月日の経過や使用頻度によって弦が伸び、本来の音とのずれが生じてしまうようになるのです。
また、弾いたさいに音がモコモコしてぼやける場合やキンキンして耳に痛い音になる場合は、フェルトの固さが原因です。フェルトの密度が低いと輪郭のくっきりしない音になり、反対に密度が高いと固くてぱっとする音になります。
明るく美しい音色にしたい場合は、内部のハンマー部分に接するフェルトを、専用の器具を使って調整すると音質に変化を生ませることができます。
このように、ハンマー部分やフェルト部分によっても音が大きく変化します。結果、音が狂ってしまいやすくなる原因の一つともいえるでしょう。
ピアノには響板と呼ばれる板があります。響板は音を増幅させる効果があるのでとても重要な役目を担います。
一般的に響板は木製です。金属でできた響板は音の質や高低差関係なく増幅する効果があるため、金属でできたピアノ線を叩いた際に出る金属のこすれたノイズでさえも増幅してしまいます。
一方で木製の響板を使用すると、低音を増幅させて、高音をやわらかくし、なおかつ金属特有のノイズををシャットアウトする役目があります。この響板に何らかの問題が発生していても音のずれが発生してしまうのです。
整調しても、整音してもなぜか音が改善されない場合、この響板に原因が発生している可能性があります。
響板は音の響かせるうえで大切な役割を持っています。ピアノの場合、この響板の上にピアノ線やハンマーが設置されています。ハンマーで弦を叩いたさいに発生する音は実はそこまで大きくはなく、響板に振動が伝わることで音量が増幅されるのです。この響板に割れがある場合、この音の増幅がうまくいかずピアノの音が小さくなったり、音の質が悪化するなどの悪影響が出てしまいます。
またピアノの響板は通常は中央部分が膨らむように湾曲しています。これは響板を浮かせることによって響板の下に空間を作り音の増幅をする役目を果たします。そのため、響板がまっすぐになっていた場合、音の増幅や伸びが悪く聴こえるようになってしまいます。
響板の湾曲は、年数の経過によりしなりがへたり、すこしずつなくなってしまうことがあります。また、響板のしなりがへたるということは常に強い力で張っているはずのピアノ線自体が伸びてきているということでもあります。
ピアノは金属パーツと木製パーツによって成り立っています。そのため、気温の変化にとても敏感で音に影響を受けやすくなっています。一般的にピアノを設置するさいの適温と湿度は、15度~25度、50~70パーセントが良いとされています。つまりは暑すぎても寒すぎてもピアノにとって良い環境ではないといえます。
またピアノは急激な気温・湿度の変化に弱いです。金属部分や木製部分が直接影響を受けて伸縮します。繰り返すうちにピアノの構造に影響をきたし、接合部分だけではなく、ピアノの劣化を早め音質への影響につながります。
ピアノはきれいな音色を響かせ、聞き手だけでなく奏者にも心地よい音色を届けてくれる素晴らしい楽器です。きれいな音を維持するためには定期的なメンテナンスが必要不可欠です。それだけではなく、日々の取り扱いにも気を配りましょう。
購入後に音が変化してしまい、すぐに調律しなければいけなくなる場合はできることなら避けたいところです。ピアノの購入を検討している場合は以下の点に着目すると良いでしょう。
ピアノは他の楽器と比較して個体差の性能のばらつきが低く、比較的安定した品質のものが多い傾向があります。しかし、音が狂いやすい個体のものも存在するため、購入時には一度は試しに弾いてみることが大切になります。
試奏する場合は以下の点に着目してみましょう。
・調律済かどうか確認する
試奏したピアノを購入するとき、その時点で調律がされているかどうか確認しましょう。弾いたときにしていない場合、購入後に調律を行って音が変化してしまう可能性があります。
・すべての鍵盤の音をチェックすること
ピアノ線の張り方によって音が変化するため、全部の鍵盤の確認する必要があります。複数の弦が張ってある個所は全く同じ調律ではなくわずかにずれていると音に奥行きが出るといわれているので、試奏して確認しましょう。
・音はクリアかどうか
ピアノは音のユニゾンが狂いやすい楽器といわれています。そのため、弾いたときの和音の音の響きがクリアかどうか確認しましょう。
・オクターブの調律がきれいに仕上がっているか
ピアノ調律は基本的に現代調律が主流です。オクターブの音がきれいに重なるように定義された調律のため、もしオクターブのキーを同時におしたさいに違和感があれば、調律の仕方が異なる場合があります。
チューニングハンマーとピアノ電子チューナーなどを使用すれば、個人での調律は可能です。しかし、ピアノのしくみに対する知識と経験がなければうまくいかず、調整前よりも悪化してしまう可能性があります。
また、素人による調律は、調律後すぐに狂いが生じてしまうことが多々ありますので、知識や技術に自信がない場合は調律を専門家に相談しましょう。
ピアノの音が狂ってしまった場合、以下の点に着目してみましょう。
● ピアノ線の状態を確認する
● ピアノ内部の響板の曲がり具合を確認する
● 設置環境はどうなっているか確認する
また、ピアノ購入時にも気をつける必要があります。
● 全部の鍵盤を弾いて音を確認してみる
● 調律済みかどうか尋ねる
ピアノの調律は個人で行うとずれが生じやすくなるのであまりおすすめできません。調律に自信がない場合は、ピアノ調律のプロに相談し、適切な対応をしてもらうと、ピアノ本来の美しい音色につながるでしょう。
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