ピアノ調律の工具・道具は何を揃える?必要なものとピアノの調律方法
ピアノを持っている以上欠かせないのがピアノの調律です。少しでも怠ればピッチがずれ、長期間放置しておけば内部にカビや錆びが発生することもあります。定期的な調律は必ず行いたいものです。
調律の手順や使用する道具を知っていますか?近年自分で調律を行う人も増えてきているため調律道具を通販などで購入することもできます。
ここでは自分でピアノを調律する方法と必要な道具、業者のピアノ調律方法と使用している道具、ピアノ調律において大切なことについて説明します。
1年に1度は行いたいピアノの調律。しかし決して安くはないため維持費がとてもかかります。そのためか、自分で調律をする人が増えてきました。ピアノはとても繊細な楽器であるため、調律は決して簡単なものではありません。ですがコツさえ覚えてしまえば自分でもできるかもしれません。
ここではピアノ調律に必要な道具について、そしてピッチを合わせる手順について説明します。
自分でピアノを調律するための道具とどう使用するのかを説明します。
▽ チューナー
チューナーとは音のピッチを合わせる(チューニング)ための道具です。現在電子チューナーというものが販売されています。また、携帯のアプリでも電子チューナーというものがあります。
ピアノのピッチを合わせるには音のウナリの数を数えたり、オクターブ調律ができたりと様々な技術が必要となります。しかし電子チューナーであればウナリの数を数える必要はありません。また、ピアノ用のチューナーであればオクターブ調律も自動で計算してくれるため、音を聞き分ける技術が無くても調律ができる道具です。
▽ 調律ハンマー(長いもの)
調律ハンマーというのはピアノの弦の留め具を緩めたり締めたりするための道具です。チューナーで音のずれを確認し、調律ハンマーで留め具を緩めることで正しい音へ合わせていきます。
調律ハンマーにはコンパクトな短いものと長いものがあります。自分で調律をするのであれば長い調律ハンマーをおすすめします。短い調律ハンマーで留め具を調節する場合、手が動いたかどうかわからない程度で音が変わってきます。
そのためとても繊細な作業が必要となります。しかし柄が長ければほんの少しの調律もしっかりと手に伝わるため調節しやすくなります。そのため調律ハンマーを選ぶときは柄の長いものを使うのがおすすめです。
▽ ストッパー
こちらはピアノの屋根前や鍵盤蓋を止めておくためのものです。業者が調律する場合には鍵盤蓋などは取り外すことが多いですが、そのための工具が必要となるためストッパーで止めておくこともできます。チューナーや調律ハンマーと一緒に用意しておきたい道具です。
現在これらのような道具がチューニングキットとして売られています。自分で調律する際にはこれらすべてが必要になりますので、一度調べてみてはいかがでしょうか。
ピアノの調律に必要なのは音を合わせることと、音を保たせることです。音を合わせることは、チューナーを使用することで簡単に行えます。チューナーをメモリに合わせるだけで音を合わせることができます。
次に音を保たせるというのは調律を安定させるということです。チューナーを見てあわせてもすぐに狂ってしまいます。道具がありこの2つができれば自分で調律できるかもしれません。
▽ 音の合わせ方
ピアノは1音につき複数弦が張ってあります。チューナーは複数ある弦の中央に合わせます。そして隣の弦を中央の弦と同時に鳴らし、ウナリを聞きます。ウナリが全く無くなればその鍵盤の弦は終わりです。この手順で残りの鍵盤の弦も合わせていきます。実はこのウナリを完全に無くす作業は難しいとされる作業であり、正確に行うには程度の経験が必要になってきます。
▽ 調律曲線を気にする
ピアノの調律はオクターブ上下の音同士のウナリも無くさなければなりませんが、インハーモニシティという弦楽器特有の現象が原因で、ピアノ専用でないチューナーを使用するとうまく合わせることができません。
弦の太さが変わることでピッチに微細なずれが生じます。そして太い弦から細い弦までで生じた周波数のずれのグラフを調律曲線と言います。ピアノ専用でないチューナーでうまくオクターブのウナリを無くせないのは、このずれを計算する機能が搭載されていないからです。
現在は携帯で使用できるピアノ用電子チューナーのアプリがあります。こちらを使用すれば先ほどの調律曲線に悩まされることなく調律することができます。
電子チューナーアプリのメリットは以下のようになっています。
・どの弦もチューナーの表示に合わせていくだけで良い
・ウナリの数を数える必要が無い
・オクターブ調律を自動計算してくれるため調律曲線に悩まされない
このようにピアノ用の電子チューナーアプリには様々なメリットがあり、自分で調律をすることができます。ピアノ用の電子チューナーアプリは安くても数万円するようです。高額に思えますが、年に1度調律をお願いすることを考えれば、2回から3回の調律で元を取ることができます。
自分で調律を行う場合には持っておいた方が良い道具です。
調律の中で最も難関と思われる作業がこの音を保たせるという作業です。きちんとチューナーに合わせたはずが、弾いてみるとピッチがすぐに狂ってしまいます。この原因は弦の張力にあります。弦にはチューニングピンと弦を押さえる部分、弦が響く部分があります。この2つの張力が一定になっていないまま調律を終えてしまうことでピッチがすぐに狂ってしまうのです。
解決方法は、ピッチを合わせるタイミングをこの2つの部分の張力が一致したときにすることです。具体的な方法を説明します。
・電子チューナーを使用しピッチを高めに合わせる
・鍵盤を強く叩きながら弦を少しずつ緩めていく
・チューナーを見ながら強く打鍵し、ピッチがそれ以上低くならない上で音程と合うまで調節する。
以上の手順を行うことで合わせたピッチを保たせることができます。
コツはとてもゆっくり弦を緩めることです。これらの作業でピアノの調律をすることができます。
自分でもできるようになってきたピアノ調律。自分で行う調律と、プロの調律師の調律方法や使用している王具とではどのような違いがあるのでしょうか。ここではプロの使用している工具について、プロの繊細なピアノ調律の手順、ピアノの調律において大切なことについて説明します。
調律で使用するのは以下の5点です。
▽ 音叉
音叉は基準となる音を聞くために使用する道具です。音階でいう「ラ」が基音であることは聞いたことがあるかもしれませんが、その「ラ」のピッチにも種類があります。そのため音叉にはA=440用のものやA=442用など数種類あります。
▽ チューニングハンマー
こちらは弦が巻き付いている部分であるチューニングピンを回す道具です。チューニングピンを締めることでピッチが上がり、緩ませることでピッチが下がります。微細な調節で音が変わってくるため慣れが必要な道具です。
▽ チップ、レンチ
チップはチューニングハンマーの先端に取り付けて使用するものです。チップには様々なサイズがあります。それはチューニングピンのサイズが様々であるため、1つのチューニングハンマーでもサイズの異なるチューニングピンに対応できるようにするためです。レンチはチップの取り外しを行う道具です。
▽ ウェッジ・ミュート
こちらは弦の音を消音(ミュート)するための道具です。ピアノは1音に対して3本の弦が張ってあるため、聞きたい弦のみを聞けるように他の弦を消音させます。ロングミュートはある程度隙間が広い部分へ使用し、ウェッジは細かい部分へ使用します。
▽ ドライバー
ピアノのネジの取り付け取り外しに使用します。ピアノのパーツや外装によってネジのサイズが変わってくるため、様々なサイズのドライバーが必要です。
調律師の仕事はピアノのピッチを合わせるだけではありません。時には鍵盤の弾き心地を整える作業などもします。その際に使用するのがアクション調整工具と呼ばれる、ピアノの内部を調節する工具です。アクション調整工具はダンパーレギュレーターや整調腕木、キーリフターや万能コテなど様々な種類があります。
また、ピアノ内部の状態が良くない場合、その場でできる範囲であれば修理もしてもらえます。そのための修理道具も持ち歩いています。
ピアノ調律師がどのような手順で作業を行うかを説明します。
▽ 調律前の準備
・屋根前を開ける
・上前版を取り外す
・弱音マフラーを外す
・端についているビスや蝶ネジを外す
・鍵盤蓋を外す
▽ 調律作業
・ミュートしたい部分へミュートフェルトを挿し込む
・音叉やチューナーを使用し37キーのAの音を合わせる
・オクターブ上のD、オクターブ下のGと順番に音階を作っていく
・ミュートフェルトを外し、ウナリを無くす
・オクターブのウナリを無くす
調律の作業は大まかにはこのようになっています。調律の作業はとても繊細で技術と経験のいる作業です。
現在自分で調律するための便利な道具が数多くあります。そのおかげで、自分でピアノのピッチを合わせられるという人も増えてきました。
しかし、覚えておきたいのが、調律師の仕事はピッチを正確に合わせるだけではないということです。ピアニストの好みの音色を把握し、ずれの無いピッチの中でその好みに寄せていく技術は、調律の勉強をして経験を積んできた調律師だからこそできることです。繊細な楽器だからこそ、ピアノ調律のプロへ任せましょう。
自分で調律ができるようになった今、プロへ頼むのかを迷っている場合は以下のことを参考にしてみてください。
● 自分で調律をする時はチューナー、調律ハンマー、ストッパーを用意する
● 音を合わせることと音を保たせることが大切
● プロは調律以外にも内部の調節工具や修理工具も持っている
● プロは調律だけでなく音色の調節や弾き心地の調節も行ってくれる
以上のことを参考に、ピアノにとって最も良いと思われる調律方法を選びましょう。
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