ピアノ調律の必要性と定期的に行う理由
ピアノは鍵盤楽器であると同時に弦楽器でもあるということをご存知でしたか?木の型に収まったような恰好をしていますが、内部には弦が張ってあり、それを小さなハンマーが叩くことによって音が出ます。ピアノに調律が必要な理由はそこにあるのです。
ギターやヴァイオリンなどの弦楽器がこまめなチューニングをするのと同じように、ピアノもきちんと調律をする必要があります。ピアノの調律はついつい怠りがちな作業ですので、その大切さについてご説明します。
目次
ピアノの調律は年に1度以上行うのが最良とされていますが、果たしてそれほどこまめにやる必要があるのか……。そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。調律をしようか迷っている方へ、まずはピアノの調律をすべき理由をご紹介します。
ピアノは調律をしないままでいると少しずつ音が下がり、結果的に音が汚くなります。これはピアノの内部に張ってある弦が緩んだり伸びたりして、張力が弱くなっていくことによって起こります。
細かな音のズレを聞き分けられない人も多いのが実情ですが、1音だけ音を出したときに違和を感じなければ大丈夫というわけではありません。ピアノは両腕の十本の指で演奏する楽器ですから、同時に数個の鍵盤を押さえるシーンが多くあります。
1音しか出さない場合は感じなくても、和音を演奏したり、オクターブをまたいだ同じ音を出したりするときなどに違和感が生まれることがあるのです。ひとつでも音がずれていると、演奏全体がちゃらんぽらんな、乱雑なものになってしまいます。調和のとれた美しい演奏をするためには、きちんとした調律をこころがけましょう。
調律をしないとピアノ本体の不具合に気づけない場合があります。調律師に調律をしてもらうとピアノの状態を教えてもらうことができます。
調律とは、ピアノの弦のゆるみなどの状態を確認し、正しい音に直すことです。しかし、調律師はピアノを弾いたときの感触(タッチ)の「整調」や、音の雰囲気や音質を調整する「整音」もしてくれます。整調をすることによって鍵盤の固さを整えることができ、子どもが弾くピアノは鍵盤の固さを軽くしてもらうこともできます。
熟練の調律師はピアノ一台一台のクセや特徴を見極め、そのピアノに合った音が出るように整音してくれるといいます。これらの調整は、調律師の中でも経験のある人が持つ特別な技術になります。調律をお願いするときは、それらの作業をしてもらえるかどうかにも目を向けてみると良いでしょう。
あまり知られていないことではありますが、ピアノには羊毛を使った部位が多くあります。ハンマーや、音を止めるクッション用のフェルトなどです。クローゼットの洋服と同じように、虫に食われてしまうことがあります。
定期的に調律をすることによって虫害に早く気づきやすくなり、被害を最小限に食い止めることができるのですが、長く調律をしていないピアノで部品を食い潰されているものも多くあり、交換費用も高くつくものが多くあります。
また、中にゴキブリやねずみの糞が溜まってしまっている場合もあります。排泄物がピアノの材木などに浸みこんでしまっていると、部品の微調整をしても繰り返し故障してしまうことがあります。ピアノの弦は金属なので、排泄物の付着によって腐食が起こり、断線してしまう場合もあります。
ピアノは足の付いた箱型の楽器で、アップライトピアノかグランドピアノかを問わず、上蓋を締めたまま演奏することができます。特にアップライトピアノの場合、上蓋を開けることは稀ですし、壁際に設置することが多いためいっそう湿気がこもりやすくなります。
ピアノの表面は塗装されていますが、内部は木も剥き出しなので、湿気や汚れの害に弱くなっています。普段は乾燥材や防虫剤で内部の環境を保っていますが、それらの薬剤も定期的な交換が必要です。
調律を行うと、ピアノ内部の薬剤の交換も行ってくれます。長年ピアノの調律をしていないと、中にたまった湿気によってカビが発生しやすくなります。弦は湿気に弱いので、カビや錆によって断線してしまうことも多くあります。また、木材などの部品が湿気によって膨張・変形し故障が起こることもあります。
調律をこまめにする必要性は、調律料金の面でも発生します。定期的に調律を行っているピアノよりも、放置年数の長いピアノの方が作業に手間がかかり、費用が高くなってしまいます。また、それまで緩んでいた弦を急激に引き延ばすため、急なピッチ上げによる断線の恐れもあります。
ギターやヴァイオリンなどは、電子チューナーなどを持っていれば自分でチューニングをして音の狂いを正しく戻すことができます。しかしピアノはとても複雑な構造をしており、とても素人が調律できるようなものではありません。
調律師というプロの職人によって定期的に調律をしてもらってこそ良い状態を保てるので、正しい期間で調律をしなければ様々な問題が起きる可能性があり、諸費用がかかる場合もあります。ピアノの状態のためだけでなく管理費用のためにも、きちんとした周期で依頼するようにしましょう。
ピアノは、鍵盤と内部を繋ぐ部分だけでも5,000以上の部品が使われています。弦も200本以上あり、羊毛や木などの自然素材もたくさん使われています。
見た目以上に精密な構造をしているデリケートな楽器がピアノです。そんなピアノを正しく保ち、使うには、調律が必要不可欠なのです。
ピアノはとても繊細に作られた楽器なので、正しく使うには各パーツの細かな調整が重要になります。
● 弦
ピアノの弦はとても強い力で引っ張られているので、時間の経過とともに緩んだり、伸びたりしていきます。そのために、ピアノの鍵盤を叩いて出る音も少しずつ下がり、チューニングが狂ってくるのです。
● ハンマーフェルト
ピアノの鍵盤を弾くとピアノ内部でハンマーが動き、張られた弦を叩きます。それによってひとつひとつの音が出る仕組みになっています。長年使用していると、ハンマーについているフェルトが変形し、音色が変わってしまいます。正確に弦を打つことができるよう、ハンマーやフェルトの微調整も大切になってきます。
● フレンジ
フレンジは、鍵盤を弾いてハンマーを動かす時に間接の役割を果たしている部分です。この部分に不調が起こると、思い通りにピアノを演奏することができなくなります。
音のズレや状態の変化は、全く演奏していないピアノでも起こります。ピアノは必然的に、調律を終えた直後から少しずつ音程が狂い始めます。調律後に演奏を全くしない状態で置いておいたとしても、調律の必要は再び生じることになります。故障や不調の早期発見にもつながるので、少なくとも1年に1回は調律をするようにしましょう。
ピアノを弾かないということは、ピアノの内部の消耗は起こらないことになります。ピアノを弾かないでおくことが特別ピアノを傷める原因にはなりません。しかし、演奏せず置いてあるだけの期間も、ピアノは湿気とホコリと温度の変化にさらされているため、徐々に起こる劣化は防ぎようがありません。それらのメンテナンスのためにも、定期的な調律によって内部の状況を確認する作業が必要になります。
たとえ年に1度の調律をしていたとしても、次のような症状が現れた時には別途に調律が必要になります。
・鍵盤を弾いた時、戻るのに時間がかかる。
・鍵盤が落ちたまま上がってこない
・押しても音が鳴らない
・指を離しても一か所だけ音が伸びたままになる
・ピアノの音と同時に金属音が聞こえる
・右のペダルを踏んでも音が響かない
これらの場合は、ピアノの故障が起こっていることがあります。調律師に現状を確認してもらい、必要があれば修理に出したり、弦を張り替えたりする必要があります。特定の音が出なかったり、特定の鍵盤が戻らなかったりする
現象を「スティック」といいます。スティックは比較的簡単に直すことができるので、調律師に適切な処置をしてもらうことによって元通りに弾けるようになります。
ピアノの調律は手間と技術が必要な繊細な職人作業です。その仕事内容に伴って、それなりの金額が発生します。
そもそも、ピアノの音が狂ってしまう具体的な理由とはなんなのでしょうか。音が狂う理由を知って、ピアノの状態をできるだけ良好に保ちましょう。あわせて、ピアノの状態を良好に保つために日頃からできる対策をお教えします。
一般的なピアノには88の音があります。しかし、ひとつの音を作っている弦が1本とは限りません。最低音域では1音に1本の弦が使われていますが、低音域では1音に2本、中音域以上では1音に3本の弦が使われていて、弦の総数は200本を超えます。
1本の弦には常に約80~90キログラム、全体には20トンという大きな張力がかかっています。金属には、ずっとかかっている力が緩和されるという性質があるので、ピアノの弦も全く弾かない状態であっても張力が弱まり、だんだん音の高さ(ピッチ)が下がっていきます。それらの力がかかったまま時間が流れることによって弦が伸びたり緩んだりし、音が少しずつ変化し狂っていきます。
この張力の緩和は調律直後から起こるので、購入以降一度も調律をせずにピアノを延々と正しく演奏することは不可能になります。
ピアノの弦はもともと狂いやすい繊細なものです。弦が特に狂いやすい状況には、大きく二種類あります。
1.新しいピアノや、張り替えたばかりの弦を使っている
弦楽器の弦は、新しく張ったばかりのときはしばらくの間、とても狂いやすくなります。ピアノの弦はとても硬い高炭素鋼でできており、使い慣れて馴染んだ弦よりも新しい弦の方が、元に戻ろうとする力が強く働くのです。
2.ピアノを弾く機会が多い
一日に長時間ピアノを弾いている場合は、早く狂いが生まれます。ピアノの弦はハンマーで強く叩かれることによって音を出しているので、長時間多回数弾かれるピアノの弦はそれだけ多くハンマーで叩かれています。よく使う音域は特に調律が狂いやすく、音の高さが下がることもあります。
ピアノには天然素材で作られた部品が使われています。環境の変化に敏感で、引っ越しや移動時は狂いやすいです。
・温度変化による影響
空調や暖房機器による急激な温度変化に弱いです。ファンヒーターやエアコンなどからの風が直接ピアノに当たらないよう、空調をコントロールし、急な温度差や極度の高温低温にさらさないようにしましょう。
・湿度変化による影響
ピアノが不調になる原因の約70%が湿気とも言われます。高湿度の状態や結露などによって、各部品の動きが悪くなることがあります。
湿気も大敵ですが、乾燥しすぎると木材やフェルトが収縮し、ピアノにとって大きなダメージになります。長時間西日が当たる部屋や、床暖房などでの長期間の設置も乾燥しすぎてしまうため注意しましょう。
ピアノにとって快適な空間は、国産ピアノの場合は室温20度・湿度50%を相対湿度としての目安に、環境管理をするとよいと言われます。
■ 位置
・安定性が良い
・直射日光が当たらない
・窓際や外壁に面していない
アップライトピアノは200㎏以上、グランドピアノは小さくでも300㎏以上あります。倒れたりしないよう安定した場所に置き、耐震防振対策をしておくと安心です。また、窓際は気温湿度の変化を大きく受けます。外壁との間には結露も溜まりやすいので注意が必要です。
■ 対策
ピアノの湿気対策には、ピアノの内部にこまめに通気をすることが有効です。天気のいい日に、鍵盤の蓋や上蓋を開け、前と下のパネルを外して2~4時間くらい湿気を抜きます。湿度の多い日にこれをすると逆効果になるので注意してください。ピアノカバーは定期的に取り外し、風通しのいいところで干しましょう。
そのほか、特に有効な湿気対策として、ピアノ専用の湿度調整剤のご使用もお勧めです。
ピアノの調律の重要性が理解していただけましたか?
● 正しい音で演奏するため
● 故障や不調・虫害をいち早く知るため
● 湿気による故障を防ぐため
● 調律せず放っておくと調律代がかさむため
これらが、ピアノの調律が必要な理由です。
また、ピアノをよりよい状態で保存しておくためのポイントは、以下のものになります。
● 少なくとも年に1度は調律をする
● 安定した、湿気と温度差の少ない場所に置く
● 最適な環境は、室温20度に対して湿度50パーセント
● 天気のいい日にはピアノの内部に風を通して湿気を逃がす
調律時に見つかる不調や損傷の数や度合いが軽少なほど、修理費は安く済みます。
大切なピアノを長く使うためにも、日頃から丁寧に扱いながら、肝心なところはピアノの調律を専門のお仕事とする調律師に頼んで、年に一度しっかりとメンテナンスをしましょう。
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