コラム
趣味のピアノを自宅で演奏したい、子供がピアノ教室に通っているので家でも練習させてあげたい、そう思っている方もいるのではないでしょうか。
しかしピアノは大きなホールにも響き渡るような大きな音を出します。そのまま弾いてしまうと、近隣住民の方たちからお叱りの言葉や注意を受けてしまったり、トラブルに発展してしまう可能性もあります。
そこで今回は自宅でピアノを演奏する際のさまざまな防音対策の方法や、トラブルの危険性について解説をしていきます。しっかりと内容を把握してピアノの防音対策に役立てましょう。
まずはどんな音が周りに騒音として聞こえてしまうのか、ピアノの音はどの程度の音と同等なのかについて解説していきます。
人の声や何か音が出た時、空気の圧力が変化します。この変化を「音圧」と呼び、単位にdB(デシベル)を用います。このdBは音の大きさや強さを表す単位で、倍率を差で表しています。
差が20dB→10倍、40dB→100倍、80dB→1000倍と大きくなっていき、例えば60dBの会話の音と40dBの図書館の音には20dBの差があり、10倍の音の大きさとなります。そして人が騒音を感じずに快適な生活をおくられるのは40dBと言われています。
ではピアノの音はどれぐらいの大きさなのでしょうか?一般的には90dBと言われています。これは犬の鳴き声や滝の近くとおなじぐらいの音の大きさで、人が騒音と感じ始める50dBの100倍の大きさなのです。この大きさの音を出されてしまっていたら近隣住民が怒ってしまうのも無理はないかもしれません。
ではそんな大きなピアノの音はどうやって対策すればいいのでしょうか。ここでは防音対策の方法を大きく3つに分けて紹介していきます。それぞれ特徴があるので住宅にあった対策をしましょう。
この方法には「部屋を防音室にする方法」と「部屋に防音室を作る方法」の2種類があります。
・部屋を防音室にする方法部屋の壁や床、天井に防音加工を施し、部屋自体を防音室にする方法です。ピアノ教室やプロの練習にも用いられている防音対策で1番効果が期待できる方法でしょう。しかし工事業者に作業をしてもらうため費用と時間がかかってしまいます。
・部屋に防音室を作る方法組み立て式の防音室を設置して、部屋の中に防音設備の整っている小さな部屋を作る方法です。大がかりな工事や業者を呼ぶことなく自分で組み立てられることが可能です。部屋を防音室にする方法よりも安価なことも特徴です。
子供の習い事で防音室を取り入れるのははばかられるという方もいるかと思います。防音室ほどの効果は得られないかもしれませんが、防音グッズを使うことで手軽に防犯対策は行えます。防音グッズは外に音が伝わる床・壁・天井・窓に設置することが大切です。そして防音には「吸音」「遮音」「防振」の3種類があることを覚えておきましょう。
それぞれ
という効果を持っています。
・床の防音対策ピアノは鍵盤を叩いて音を出す「打弦楽器」なので、鍵盤を叩いた音が床に伝わってしまいます。防振効果を期待できる「振動対策マット」を敷いて音の振動を吸収・拡散させると下の階に音が響かなくなるでしょう。
・壁の防音対策壁には遮音性と吸音性に優れた材質を用いると効果的です。特にピアノの音は壁に向かって響くので対策しておきたい箇所です。遮音パネルは重く、設置が大変なので業者に依頼することも考えてみましょう。
・天井の防音対策天井には吸音性の高い素材を貼り付けると効果的です。しかし素人が作業を行うと、正しく貼り付けられていなかったりして突然落ちてきてしまう危険性がりますので、天井に防音対策を施したい場合は、業者に依頼すると良いでしょう。
・窓の防音対策窓ガラスは壁よりも薄いので音が外に伝わり易くなっています。さらに音を吸収できるものがなく重さもないので防音性能がとても低い箇所となってしまっているのです。複数の防音素材を重ねた空気の層で防音対策を行います。
吸音素材でできたカーテンを設置したり、窓に防音壁をはめ込む方法がありますが、中でも効果が期待できる方法は、窓を2重にする「インプラス」という方法です。インプラスには断熱効果も上げることができます。
そして他にもピアノの足に防振ゴムを設置して対策をする方法もあります。防音室と併用することによって、より大きな効果も期待できるでしょう。
どうしても今の住宅では周りに音が漏れてしまう、賃貸住宅なので防音対策ができない。なんて悩んでいる人もいるかと思います。
そんな方は防音性能の高い物件や防音室が付いている物件への引っ越しも考えてみませんか?最近ではそういった音楽が好きな人をターゲットにしたシェアハウスも少なくはありません。1度自分の希望する条件に見合った物件を探してみるのも良いでしょう。
ここまで防音対策の方法を紹介してきましたが、住宅の違いによっても防犯対策の方法は変わってくるのです。そこで、ここでは戸建て住宅とマンションの防音対策の違いについて紹介していきます。
マンションと違って他の住宅から距離があるので、マンションに比べると音の伝わりは弱くなりますが、だからといって防音対策を疎かにすると近隣住民の方とのトラブルにつながってしまいます。
風通りの良い部屋では窓を開けたままにして過ごすことがあると思います。しかしピアノを弾く際が窓を開けているのと閉めているのでは外に漏れ出ていく音の大きさがまるで違います。前述したように窓を2重にしたり吸音素材のカーテンにすると、より高い防音性能を見込めるでしょう。
また、見落としがちな場所に換気扇があります。音がよく伝わり、室内に直接届く換気扇も防音グッズで対策をしておきましょう。「防音チャンバー」という音の出入り口を狭くするグッズを取り付けるといいでしょう。
マンションはすぐ隣が他の住宅なので騒音トラブルが起きやすいため、戸建て住宅よりもさらにしっかりとした防音対策が必要になってきます。
下の階への振動を抑えるためにピアノを床から離すことが大切なので、振動対策マットやピアノ架台の重要性が高くなります。どちらも厚いほど効果が高くなり、マットは脚で踏むペダルの下にも敷いておくとより効果的でしょう。そしてピアノの足に防振ゴムを設置することも下の階への振動を抑えるために重要です。
アップライトピアノ・グランドピアノ・デジタルピアノはそれぞれ防音対策の方法が違います。それぞれの特性に合った対策を紹介していきます。
アップライトピアノの背面と壁の間に防音パネルを挟みます。アップライトピアノの大きさに合わせて業者に作成してもらい、設置は簡単なので自分で行います。また、設置位置を変えると音の出ていく方向も変わるので試してみてください。
演奏時、グランドピアノの蓋を閉じたままだと音量を抑えることができます。「ピアノマスク」というグランドピアノの下部に板を設置する方法も効果的です。
デジタルピアノはヘッドホンを使っての演奏もできるのですが、打鍵音は防げません。ですので床に防振マットを敷くことが大切です。
アップライトピアノとグランドピアノの場合はその他にも「消音装置」という音を変換してヘッドホンから流すようにする装置を使うことも効果的でしょう。
防音対策をしなかったり、怠っていると起こってしまうかもしれないトラブルについて説明していきます。もしかすると大きな事件につながってしまう可能性もあるので十分注意しましょう。
自宅のポストに注意喚起の手紙を入れられたり、直接クレームを言いに来られてしまうかもしれません。そのようなことになったら素直に謝罪し、練習する時間や音量を見直しましょう。マンションの場合は管理会社から連絡が入ることもあります。
トラブルが大きくなってしまうと裁判に発展してしまったり、最悪の場合、事件になってしまうかもしれません。実際にピアノの騒音が原因で殺人事件が起こってしまったケースもあります。そうならないためにもトラブルは放っておかずに早期解決することを心がけましょう。
トラブルを起こさないためには何よりもルールを守ることが大切です。近所に住む方への挨拶は円滑な人間関係を築き、トラブルを回避するために重要となります。また、ピアノを練習する時間が決められている場合、それ以外の時間にも練習してしまうと不信感が募ってしまいます。
そしてもう1つ大事なのは気配りです。近隣に住む方々と助け合って生活することで、ピアノに対する理解も深まってくれるかもしれません。
ピアノは練習を積まないと上手にならない楽器です。そして好きなものをずっとやっていたい気持ちもわかります。だがしかし周りを顧みずピアノを弾いていてはいけません。何かトラブルになってからでは遅いのです、今の内から防音対策をしてください。
防音対策はピアノの種類や住宅によって方法が違ってきます。しっかりと自分に合った防音対策を施してピアノの音を外に漏らさないようにしましょう。
周りの理解と適切な防音対策をすることによって自宅でも快適なピアノの演奏を続けられるはずです。綺麗な音色は綺麗な環境から、忘れないでいてください。