コラム
「ピアノの調律」というと、ピアノの音を出すのに直接かかわる部分である鍵盤や、それに繋がるハンマーや弦の調整をイメージする方も多くいらっしゃるかと思いますが、調律過程に含まれるのはそれだけではないのはご存じでしょうか。その中でも意外と重要なのが、グランドピアノ、そしてアップライトピアノの両方に付いているペダルの調整。通常3つあるピアノのペダルにはそれぞれ役割がありますが、それらを簡単にご紹介しますと、よく使われる右側の「ダンパーペダル(ラウドペダル)」は、弾いた音を長く伸ばして持続させる効果がありますし、真ん中のものはグランドピアノでは「ソステヌートペダル」と呼ばれ、踏む直前に弾いた特定の音だけを継続させることができ、そのまま別の音を両手で弾くこともできます。同じ真ん中のペダルでもアップライトピアノでは「マフラーペダル」と呼ばれ、いわゆる消音の効果があります。さらに左側のペダルは、グランドピアノのものは「シフトペダル」と呼ばれ、音色や響きをやわらかいものに変化させる役割があり、アップライトピアノでは「ソフトペダル」という名前で呼ばれ、音量が少し弱まり、素朴な響きをもたらす効果があります。ご自分が思い描いたとおりの音楽表現を成し遂げるには、このように細かい役割がある3つのペダルを駆使することが重要になりますが、最適なタイミングでペダルの効果を発揮することが必要であるため、確実な調整が欠かせないのです。ですので、ピアノの調律を依頼される際には、音のピッチや鍵盤の深さを揃えてもらうのはもちろんのこと、ペダルについてもご自身のピアノに合った調整をしてもらうようにお願いすることが非常に大切です。